正史三国志を読む

正史三国志を読んだ感想やメモなど

はじめに

私が最初に読んだ三国志演義はジュニア向けの一冊で、

内容はかなり端折られていたはずだが、
それでも何故か心に引き付けられるものがあったのを思い出す。
その直後に吉川三国志を手に取り、歴史群像劇に「正しく魅了された」。
しかし数年して正史の三国志ちくま学芸文庫)に辿り着くと、それこそが私のバイブルとなったのだった。

なぜ私はここまで正史 三国志に惹かれるのか。
それは余りに容易に歴史物語にダイレクトに繋がることが出来るからである。
ちくま訳の8冊を順繰りに読むだけで、なにか本物の歴史に触れている実感がある。
偉い学者の解説に頼る必要もなければ
小説家の潤色された筆に酔う必要もない。
紀伝体の記事を、頭の中で再構築するその作業はパズル遊びのようなものであって、
人様に胸を張れるような趣味ではないのかも知れないが
私にとっては何物にも代えがたい愉悦であった。

このように、ちくま訳三国志を出版した関係者には足を向けて寝られないような立場ではあるが、それでも何度も繰り返し読んでいると違和感を覚える箇所にも気づき、誤訳を疑うようになる。そうしてネットで原文を探したり、解説サイトを見たりを経て、三国志集解を購入したのは十年ほど前か。

三国志集解(しっかい)は20世紀前半の著作物で、
歴代の中国の学者たちによる三国志の注釈を集めたものである。
しかしこれは残念ながら私の愛読書にはならなかった。理由としては、

・単行本よりは大きいサイズで、寝ながら読んだりはしづらい
・やはり全編が漢文で書かれているのはカロリーが高い
・意外と、「ここ気になる」の箇所について注釈がない
・「〇〇については××伝に既出」などのパターンが多く、注釈を追うのが大変

 

いま振り返って見ると私の三国志熱はこの集解購入が一区切りとなったようで
それ以後は晋書や資治通鑑をつまみ食いしながら、西晋東晋十六国のことを調べるようになった。いまでも私の関心はそちらに向いている。
しかし先日、西晋初を調べ直すためにちくま訳三国志の再読をしてみたら
これがなんと楽しいことか。
意外と覚えていることも多い一方で、すっかり忘れているようなこともある。

その「すっかり忘れている」という事実が少し惜しく
こうしてブログを始めようと思い立った。
つまりこれは自分向けの備忘録である。

もともと私は三国志の論文やら解説本は読んでこなかった。
三国志の解説サイトについては一時期は読んで感銘を受けたこともあったが
それもすぐにやめてしまった。
それは「パズルは自分で解くのが楽しいのだから」という浅ましい理由による。
つまり先行研究を踏まえていないという意味では、このブログで書く記事にどれだけ有意性があるかは不明である。
いまさらブログか?という思いもある。
が、まずは始めてみよう。